六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編73】眉間に流れる深い川

←BACK【師弟編72】ヒキが強くなる食べ物
「やっと見つけました!」

エスカレーターがすれ違う直前、五十嵐さんが叫んだ。その時、五十嵐さんが私の手を掴もうとしたが、咄嗟に裕子がその手を振り払った。

「ちょっ……ま……下で、下で待っててください!すぐ行きますから!」

腕を伸ばし、開いた手のひらをこちらに向けたまま、五十嵐さんは二階へと運ばれていった。一階に降り着いた私たちが二階を仰ぎ見ると、慌ただしく下りエスカレーターへと回りこみ、カツカツとヒールを鳴らしながら一段ずつゆっくりと下ってくる五十嵐さんの姿があった。

「なんなの、あの子。エスカレーターで腕つかむとか、メチャクチャあぶないじゃん!何考えてんだろうね、ホント!」

裕子が耳元で語気を強めた。確かに、以前会ったときの五十嵐さんのイメージとはかけ離れたその行動に、私は少し驚いた。今日も地味目のスーツに身を包み、パッと見は妖艶な雰囲気を醸し出しているが、終始慌てたような言動のためにそれらが台無しになってしまっている。

五十嵐さんがエスカレーターを下り切ると、私は無言で出口の方を指差して歩き始めた。裕子と五十嵐さんも私の後を追ってきた。自動ドアが開くと、眩しい陽の光が目に飛び込んできた。目を細めたまま振り返ると、二人も眉間にしわを寄せてしかめっ面を作っていた。その顔が陽の光のせいであることを願わずにはいられなかった。

「ところで今日はどんなご用件?あたしたち食事休憩中だからあんまり時間無いからね」

裕子が五十嵐さんの目をしっかりと見据えて、口火を切った。

→NEXT【師弟編74】ハンバーガーでは意味が無い

profile

長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
  • 性別:
  • 誕生日:
  • 血液型:
  • 出身地:
  • 好きなもの:
  • 嫌いなもの:
  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

calender

11月≫
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

戻る