六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編74】ハンバーガーでは意味が無い

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五十嵐さんはスーツの乱れを直し、髪を整えてから裕子に対峙した。

「お食事に行かれるのでしたら、私もお供させてください」

「はぁ?」

裕子は額に手をあて、日差しを遮るような格好で眉をひそめた。

「そこのマクドナルドでいいですか?」

「ちょっと!なんでアンタが決めてんのよ!アタシたちはコロッケ食べに行くの!」

コロッケはヒキが弱くなる食べ物だとついさっき結論が出たはずなのだが、今はその件については飲み込んでおくことにした。

「マクドナルドに『グラタンコロッケバーガー』があります。それで我慢してください」

「グ……」

言葉に詰まった裕子が私の顔を見上げた。その顔には――この女の言いなりになるのは納得がいかないが、グラタンコロッケバーガーは食べたい――と書かれているようだった。

「いいですよ、マクドナルドにしましょうか」

私が言うと、五十嵐さんは小さく頭を下げさっさと歩き始めた。

「奢ってあげないからね!」

「わかってますよ」

五十嵐さんの背中にぶつけた裕子の言葉も、軽くいなされてしまった。この二人が分かり合う日は来ないのだろうか。そんなことを考えていると、すぐにマクドナルドへと到着した。昼食どきを過ぎているからか、店内は比較的空席が目立った。

「グラタンコロッケバーガーのセットをコーラで」

「グラタンコロッケバーガーのセットを爽健美茶でお願いします」

隣のレジで二人並んで注文する姿をみていると、やはりウマが合わないのだろうと感じた。私は裕子の後ろからハンバーガーとコーラのセットを注文した。

注文した商品が並べられたトレイを各々持ち、窓際の四人がけテーブルへと腰を下ろした。すると、裕子が黙って私のトレイを一瞥してから、こちらに顔を向けた。

「なんで『ひき肉』頼んじゃうかなぁ?だからアタシはグラコロにしたのに」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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