六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編81】なぜ女子は財布を膝の上に置くのか

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「はいっ!出てきたコインを下皿に移す!」

裕子は五十嵐さんの台の下皿を指先でトントンと叩いた。五十嵐さんはおっかなびっくりといった様子で、コインサンドから吐き出されたコインを下皿へと移し始めた。

身体をコインサンドの方へと傾けた拍子に、五十嵐さんの膝からクロエの財布が滑り落ちそうになった。慌てて財布を左手で押さえると、右手に握ったコインを何枚かこぼしてしまった。

それしにてもなぜ女性スロッターは膝の上に財布を置いて遊技するのだろうか。全くの初心者であるはずの五十嵐さんまでそうするということは、何か女性のDNAにあらかじめ組み込まれているのではないだろうかとすら思えてくる。

裕子は身体を折りたたんで床に落ちたコインを拾い上げ、五十嵐さんの下皿へとポイッと放り投げた。五十嵐さんの唇が動き、裕子に何かを言っているようだったが、私も裕子もそれが聞こえなかった。

「大きな声でしゃべってよ!全然聞こえないから!」

裕子が言うと、五十嵐さん鼻から大きく息を吸い込んだ。

「ありがとうございますっ!!」

もはやいがみ合っているのか、張り合っているだけなのか、この二人の関係性がさっぱり分からなくなってきた。ひとまず下皿に全てのコインを移し終えたところで、裕子が五十嵐さんの顔の前で三本の指を立てた。

「まず、3枚コイン入れて」

裕子は五十嵐さんの耳元でそう言うと、コイン投入口を指差した。五十嵐さんは下皿から3枚のコインをつかみ、たどたどしい手つきでコインを投入した。パネル左側の「1・2・3」のランプが全て点灯し、5ラインが全て有効になったことを知らせた。

裕子は無言でレバーを指差し、その手を握りこぶしに変えて振り下ろす格好をした。見よう見まねで五十嵐さんはレバーを優しく押し下げた。リールが回り始めると、五十嵐さんは僅かに身体をのけ反らせた。その顔は、初めて見るものへの好奇心を隠しきれない赤ん坊のように見えた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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