六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編88】また腰を浮かす

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「あとは適当に消化すればコイン出るよ」

つかの間の安堵の中にいた五十嵐さんに、裕子が隣から声を掛けた。その言葉で五十嵐さんは我に返ったように身体を前傾させ、レバーを叩いた。言われた通りに適当にストップボタンを押すと、ブドウやリプレイが小気味良く揃い、それに合わせて乾いた金属音が下皿に響き始めた。五十嵐さんの横顔を覗きこむと、当初の不安そうな顔は消え、まるで宇宙の話に聞き入る子供のようにワクワクとした表情でリールを見つめていた。

ファンファーレが止み、台に静寂が戻ってきた。先ほど神々しい明かりを灯したGOGO!ランプも、今はパネルと同化してしまっている。五十嵐さんはまたひとつ大きく息を漏らした。

「どうします?もうヤメますか?」

私が声をかけると、五十嵐さんはハッとしたように肩を上げた。

「これって……この出てきたコインでまた遊べるんですよね?」

五十嵐さんは下皿を指差して尋ねた。

私が遊べる旨を伝えようとすると、裕子がそれを遮るように私の顔の前に手をかざした。

「もうちょっと遊んでいけばいいじゃん。どうせ三千円しか使ってないんだし……」

裕子の言葉が終わるかどうかのところで、またしても女子二人の腰が5センチほど浮いた。衝撃的な告知音を伴って、今度は裕子の台GOGO!ランプが鮮やかな青色に灯った。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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