六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編89】探偵は『BAR・BAR・BAR』にいる

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裕子は小声で「やっと引いたよ」とつぶやくと、コインを一枚投入して優しくレバーを叩いた。裕子はため息をひとつついて、リールに目をやった。だが、なかなかストップボタンを押そうとしなかった。いつもの裕子ならば狙った図柄を二周見て、三周目で停止するというスタイルなのだが、その指はなかなかストップボタンに振り下ろされない。

リールが七周ほどしたところで、ようやくストップボタンを押した。当然のように中段り『BAR』が停止している。隣で五十嵐さんが不思議そうに首を傾げた。おそらく『7』ではなく『BAR』を停止させたことが疑問なのだろう。『ジャグラーガール』は『7』揃いと『BAR』がビッグ、『BAR・BAR・7』がレギュラーのため、ボーナスを揃えるときは『BAR』を狙うのが基本だ。

その説明はあとで裕子からしてもらうとして、私はリールへと目を戻した。やはり中リールもいつもより時間を掛けて狙っている。ふと見ると、中リールのストップボタンの上に置かれた裕子の指先が、僅かに震えていた。もしかして緊張しているのだろうか。

今までさんざん五十嵐さんに先輩風を吹かせた手前、ボーナス図柄を揃えるという簡単なミッションを失敗するわけにはいかない。しかも、五十嵐さんは初心者であるにも関わらず一度で『7』を揃えたのだ。ここで失敗してしまったら面目丸つぶれだ。

そんなプレッシャーをはねのけるように、裕子は力強く中指をストップボタンに叩きつけた。中段に『BAR』がテンパイした。安堵したのか、裕子の肩から力が抜けたのがわかった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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