六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編91】『整理解放』5秒前

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「じゃあ、五十嵐さんのことは任せたよ」

私が耳打ちすると、裕子はリールを見たまま黙って頷いた。次に五十嵐さんに声を掛けた。

「僕は向こうで別の台を打ってるんで、何かあったら声を掛けてください。裕子に何か変なこと吹きこまれたら僕に報告してくださいね。僕の方から叱っておきますから」

私が言うと、五十嵐さんは笑顔で軽く会釈をした。

二人の元から数歩ほど離れてから振り返ると、早速二人は顔を近づけて何やら話し始めていた。裕子がどういうつもりで五十嵐さんをパチスロに誘ったのか、そしてなぜ私を遠ざけるような言動をしたのか。なんとなく分かるよう分からないような、どっちつかずの感覚だが、ここは裕子に全面的に任せることにした。

『サラリーマン金太郎』のシマに入ると、裕子が打っていた台のデータ表示機に店員がリモコンで何やら操作をしていた。私は慌てて小走りで駆け寄った。

「すみません、ここ僕が打ってた台です」

そう伝えると、店員は表情筋のひとつひとつまで教育の行き届いた笑顔を作り、腰から深々と頭を下げて去っていった。あやうく『空き台呼び出し』からの『整理解放』という最悪のコンボを喰らうところだった。

私はサラリーマン金太郎の156番台に着席し、背もたれに寄りかかった。このホールはシマが大きな弧を描くように配置されているので、ここからでもギリギリジャグラーを視界に入れることができた。

相変わらず二人は何やら会話を続けているようだった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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