六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編93】わざと『7』を揃えずに

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私は左・中リールで『7』をテンパイさせたまま、二人の動きに目を凝らした。裕子は手のひらを上に向ける格好をして、やれやれとでも言いたげに首を左右に振った。

私はただごとではないと感じ、右リールをわざと『7』を引きこまない位置で停止させ、すぐさま二人の元へと駆け寄った。

「五十嵐さん、どうしたんですか?裕子、何かあったの?」

二人に尋ねると、裕子はさっきと同じように手のひらを上に向け「さぁ?」とだけ答え、首をひねった。五十嵐さんの顔を見ると、初めて出会ったときと同じように真一文字に口を結び、無表情にこちらを見つめてきた。

「何があったんですか?裕子が何か失礼なこと言っちゃいました?」

「失礼なのはそっちだよ」

裕子が五十嵐さんの胸元を指差すと、五十嵐さんは気色ばんだ。

「アタシは本当のことを言っただけじゃないですか!」

「それが失礼だって言ってんの!わかんない?」

裕子は額に手をあて、わざとらしく呆れたようなポーズをとってみせた。

「そんなことだから木部っちはスロットなんかにハマっちゃったんだよ。結局はアンタのせいなんじゃないの?」

裕子の言葉が五十嵐さんの耳に届いた瞬間、五十嵐さんは全ての表情を失った。時には耳をふさぎたくなるほどの騒音で溢れているこのホールの中で、三人の間にだけ完全なる沈黙が数秒間だけ流れた。

「今日はありがとうございました。失礼します」

突然、五十嵐さんは他人行儀にお礼を言い出し、深々と頭を下げた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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