六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編94】リミットは二日

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「ちょっと!帰っちゃうんですか?ちょっとだけコイン残ってますよ!」

私が下皿を指差して引きとめようとすると、五十嵐さんは

「どうぞ使ってください。それでは」

と、一方的に言い残して踵を返した。その背中に、裕子が指を二本立てて言い捨てた。

「リミット、あと二日だよ」

それを背中で聞いた五十嵐さんは、振り向きもせずエスカレーターを降りて行ってしまった。私は状況が飲み込めず、五十嵐さんの姿が見えなくなるまで呆然と立ち尽くした。

ふと、聞き慣れたファンファーレが耳に飛び込み、我に返った。音のする方を見やると、そこにはジャグラーのビッグを消化する裕子の後ろ姿があった。私は裕子の傍らに歩み寄り、肩に手を置いた。

「何があったのさ?五十嵐さん、すごい剣幕だったぞ?」

私が尋ねると、裕子は小首を傾げるだけだった。

「何か失礼なことでも言われたの?」

質問の内容を変えると、裕子はさっきまで五十嵐さんが座っていた左隣の台の椅子をトントンと叩いた。ここに座れということのようだ。

「わかった。今、俺も『サラ金』でビッグ引いちゃったから、それ消化したら移動する」

裕子は口の端を少しだけ上げて、小さく頷いた。

私は裕子を残し、サラリーマン金太郎のシマへと戻った。自分の台に戻ると、液晶画面にはビッグボーナス確定を報せるように、精悍な顔の矢島金太郎と『7』の文字が表示されていた。私は黙って『7』を揃え、粛々とボーナスを消化した。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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