六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編97】無秩序なピエロ

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裕子は手に取ったコインを両手でカチカチと音を立てながら、ぼんやりとリールを見つめた。

「最初は喧嘩なんかするつもりなかったんだよ。少し世間話したり、スロットのことも教えてあげたりできてたんだけど……」

裕子は再び小首を傾げた。まるで自分の言動を反省しているようだった。口の重い裕子のかわりに、私は尋ねた。

「向こうから見てたらなんか携帯見せ合ってたけど、アレって連絡先の交換してたんじゃないの?」

裕子は眉を上げて肯定してみせた。そのまま指先でレバーを叩いて、気のない素振りでストップボタンを三つ押した。ブドウやピエロなどの図柄が無秩序に停止した。

「電話番号とメアドは交換したよ、一応ね。でも、もう意味無くなっちゃったかもね」

「そこまで仲良くなっといて、なんで喧嘩になっちゃうんだよ?」

私が問いただすと、裕子は遊技の手を止めた。

「木部っちのこと教えてあげたんだよ。あと二日で二十万超えたらスロプーになるよって言ってるよ……ってさ。おそらく二十万はクリアするってことも伝えた」

裕子は私の台の下皿あたりにうつろな視線を落とした。その顔には悔しさが滲んでいた。

「そしたら怒っちゃった。やっぱりあなたたちが焚き付けてるんじゃないですか!って……。そしたらまたこないだみたいにさ……売り言葉に買い言葉みたいになっちゃった」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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