六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編98】ウエイトタイム4.1秒

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「そうか……、まぁ気にすんな」

私は裕子の頭を優しく叩いた。裕子は安心したように表情を緩め、台に向き直って遊技を再開した。私は大きく息を吐きだして、レバーを叩いた。

淡々と通常ゲームを消化する。4.1秒のウエイトタイムがピタリと同期し、音が共鳴しあって鼓膜を揺らす。それを崩さないように同じペースで遊技し続ける。リプレイ成立音までシンクロし、裕子が思わず吹き出した。私もつられて吹き出してしまった。今日はじめて裕子の笑顔を見たような気がした。

「木部っち……二十万超えちゃうかな?」

裕子は回り続けるリールに視線を向けたまま尋ねてきた。

「昨日のメールにはあと三万ちょっとって書いてあったかな。今日含めて三日間で三万だから、今の木部なら十分射程圏内……というか、順調にいけば達成するだろうね」

裕子は自分自身を納得させるように、口を真一文字に結んで二三度頷いた。

「木部をもう一度説得してみようか。二十万超えたら自信付けちゃって手遅れになるかもしれないし」

私の提案に、裕子は即座に首を振った。

「ダメだよ。正吾がいつもいってるじゃん、『パチスロは自己責任だ!』って。木部っちだって自分の責任でやってるんだから、ヤメるとしても自分で決断しないとダメでしょ」

裕子は口の端を上げて笑った。

その夜、木部からのメールを受信した。そこには、目標達成まで残り一万六千円である旨が書かれていた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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