六本木ヒルズからの七転八倒

【師弟編99】空を切る金属バット

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「もうッ!あー!!全然当たんないんだけどコレ!」

「もっとしっかり見て……」

「見てるよ!逆にストレス溜まっちゃう!……何?もう終わり?ツマンナイ!」

裕子は使い古された金属バットをネットに立てかけ、ゲージから出てきた。それと入れ替わるように私がゲージへと入り、一番軽いバットを手にしてスタートボタンを押した。

ゲージの後ろから見ていると簡単に打てそうに見えた時速90キロのボールも、いざ打席に入ってみると思いのほか速く感じた。ボールの出どころを凝視し、ピッチャーの映像に合わせて左足を上げる。ボールを手元まで引きつけてから力強くバットを振りぬく。

何の手応えもなく、バットは空を切った。

裕子と五十嵐さんが『極楽園』でジャグラーガールズを演じた翌日、私と裕子は『ラウンドワン』に来ていた。『ラウンドワン』は巨大なビルの中にゲームセンターやカラオケ、ボウリングにビリヤード、屋上にはバッティングセンターやバスケットボールのコートを備える大型複合遊戯施設だ。

「ヘタ!かすりもしないじゃん!」

「うっさい!間合いを測ったんだよ!」

顔をピッチャーからそらさずに答えた。隣のゲージでは学校帰りと思しき小学生が、110キロの球をいとも簡単に打ち返している。私はその小学生のフォームを真似して、左足を高く上げた。一本足打法だ。

ふらつきながらも振りぬいたバットに初めての感触があった。次の瞬間、左足のつま先に激痛が走る。

「痛った!ぐぁ……マジか……」

自打球だ。私のつま先に当たった白球がコロコロと足元を転がる。私は腹立ち紛れにそのボールを蹴飛ばした。ゲージの外では裕子が手を叩いて爆笑している。隣の小学生も鼻で笑っている。情けないことこの上ない。

私は今年のドラフト会議で指名されることをあきらめ、ゲージを出た。

「次はバスケやろうよ、バスケ!お互いに元バスケ部なんだからさ!」

裕子はバスケットコートを指差した。西に傾き始めた陽に照らされたバスケットコートを見て、ふと、木部も元バスケ部だといっていたことを思い出した。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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