六本木ヒルズからの七転八倒

【恋慕編05】そこから先は、オ・マ・ケ

←BACK【恋慕編04】剥き揚げ出し豆腐

「長崎くん、決まったよ。次の金曜の仕事終わりで」

『一休』で管を巻いてから数日後、いつものようにCD売り場のカウンターで仕事を片付けていると、書籍売り場から顔を出した寺山さんにそっと耳打ちされた。

「ホントですか!」

私は声を潜めて聞き返した。

「杉本にも伝えといた」

寺山さんが指差した先には、品出しのために大量の本を抱えた杉本さんの姿があった。杉本さんは私達の視線に気がつくと、抱えた大量の本を左手と顎で支えながら、満面の笑みで右手の親指を立てた。

「向こうの女の子は何人なんですか?」

「一応、三人だね。もしかしたら一人ドタキャンが入るかもって言ってたけと、おそらく大丈夫だと思う」

私は「おー」と小さな歓声を上げると同時に、杉本さんに向かって親指を立てた。杉本さんは深く二度頷き、本棚の影へと消えていった。

私は初めての合コンに胸が高鳴ると同時に、現実的な不安が湧きあがってきた。

「合コン……って、初めてなんですけど、大丈夫ですかね?ちゃんとした服装とかしていった方がいいんですかね?」

それを訊いた寺山さんは、眉を片方だけの下げて人差し指を顔の前で振った。

「いいのいいの、いつも通りで。普通の飲み会だと思っていいよ。ただ、いつもと違うのは『女の子がいる』という点だけだよ」

「いや、それがいつもと全然違うじゃないですか!」

私は笑いながらツッコミを入れた。

「まぁ気張らずに飲み会を楽しめばいいんだよ。そこから先の展開はオマケだと思ってさ」

寺山さんはそう言うと、店内を見回した。その視線の先に目をやると、店の一番奥にあるカウンターから店長がこちらの様子を伺っていた。それに気がついた寺山さんは、

「じゃあ詳しい話はまた後で」

と言い残し、踵を返した。私は寺山さんの背中に、訊きそびれていた一言を投げかけた。

「寺山さん、場所は?」

「一休!」

「えっ!一休!?本気ですか!?」

唖然とする私をよそに、寺山さんは颯爽と書籍売り場へと消えていった。

→NEXT【恋慕編06】どうして?一休さん!

profile

長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
  • 性別:
  • 誕生日:
  • 血液型:
  • 出身地:
  • 好きなもの:
  • 嫌いなもの:
  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

calender

7月≫
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

戻る