六本木ヒルズからの七転八倒

【恋慕編06】どうして?一休さん!

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「寺山さん、なんで一休なんですか?」

金曜日の夜、仕事を終えた私たちは、居酒屋『一休』で膝を突き合わせていた。

「そうらよ、こーんな大衆居酒屋のテーブル席で合コンらんてねー。うまくいくわけなーいれしょー」

杉本さんはすでにベロベロだったが、その言葉は理にかなったものだった。回りの客といえば、ほとんどが仕事帰りのサラリーマンばかり。タバコの煙が厚い雲となって天井を漂い、歓談とは言い難い「怒号」がそこかしこで飛び交っていた。

「仕方ないだろ、オシャレな店なんて知らないんだし。じゃあ君らがイイ店探して予約してくれればよかったじゃないか」

寺山さんは憮然とした表情でレモンサワーを流し込んだ。

「それにしても、女の子たち遅くないですか?19時に来るって言ってたんですよね?もう1時間も過ぎてますよ。おかげで杉山さんはベロベロだし」

店内の柱に備え付けられた古びた時計を指差すと、寺山さんは申し訳なさそうに頭を掻いた。

「そうだね、ちょっと遅れるかもしれないってメールはあったんだけど……遅いね」

「もーいっかい、メールしたほうがいーんじゃないれすかねー?」

杉本さんは割り箸をクルクルと回しながら、口を尖らせた。

「分かったよ、ちょっと待ってろ。今、電話してくるから」

そう言って寺山さんは、携帯電話を持って店の外へと出て行った。その後姿を見送ると、杉本さんは頬杖をついて目を閉じた。

「最初っからねー、寺山らんかにねー、女の子をねー、紹介してもらおうらんてことがねー、土台無理な話らんですよー」

私はその言葉に苦笑いで応えた。確かにその通りかもしれない。正直、初めての合コンに緊張していた私は、このまま女の子たちにドタキャンされても構わないとさえ思い始めていた。男だけでグダグダと呑み明かすほうが我々の性に合っているのは間違いない。

「おっ」

杉本さんが小さく声をあげた。視線の先には、電話を掛けに行った寺山さんが、店のドアを開けて戻ってくる姿があった。電話を掛けると席を立ってから僅か1分くらいしか経っていない。

「こりゃーダメれすかねー」

杉本さんは力無くテーブルに突っ伏した。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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