六本木ヒルズからの七転八倒

【恋慕編08】衝撃的な、ふたつの出会い

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店の入口の方に目をやると、ピンクのワンピース姿の女性が店内をキョロキョロと見回していた。

「こっちこっち!」

寺山さんが右手を高く上げて手招きをすると、それに気がついたその女性は、満面の笑みで、胸の前で小さく手を振り返した。その後ろには、グレーの帽子を目深に被った髪の長いもう一人の女性がいた。ハッキリとした表情までは確認できないが、前の女性の肩越しから、こちらに軽く会釈をしているようだった。

そこまで確認すると、私は隣にいる杉本さんと顔を見合わせた。杉本さんは私の顔を見るなり、最高の笑顔で私の右肩を何度も叩いた。早くもご満悦といった感じだ。

むさ苦しいサラリーマン客の間を縫うようにして、二人の女性がこちらのテーブルへと歩み寄ってきた。私は椅子に座り直し、服のシワを伸ばしてから姿勢を正した。それに倣うように、杉本さんも背筋をピンと伸ばした。

「じゃあ紹介するよ。こちらが『森裕子』さん。俺が以前にSNSで『近所の呑み友達コミュ』やってたの、知ってるでしょ?その時に知り合った人ね」

「森裕子です。はじめまして」

森さんは私の目をしっかりと見ながら深めのお辞儀をして、髪をかき上げた。そのひとつひとつの所作に、洗練された大人の気品が感じられた。それでいて、丸顔でやや目尻の下がった小動物のようなその顔つきには、親しみやすい愛嬌があった。

私は一瞬で心を奪われそうになったが、そんな感情などおくびにも出さずに「どうも」と軽く頭を下げてクールな男を装った。こういう時、どんな反応をするのが正解なのか、女性関係に疎い私にはよくわからないのだ。

「で、そちらの方が……」

私の動揺をよそに、紹介が続く。

「大久保……大久保、何さんでしたっけ?」

森裕子さんの後ろに隠れていた女性が、目深に被っていた帽子を取り、静かに口を開いた。

「千夏です。大久保千夏です。よろしくお願いします」

――え?

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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