六本木ヒルズからの七転八倒

【恋慕編19】先生アイデンティティ

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「またリプレイじゃん!もー!」

裕子さんの台は、またしても上段受けでリプレイがテンパイしていた。

「大丈夫ですよ、ガックンガックンする切れ目を狙えば。ほら、これですよ」

私はそう言って、裕子さんの台の左リールの切れ目のタイミングに合わせて、トントンと指でリズムを取ってみせた。それに合わせるように、裕子さんの首が『赤べこの置物』のように上下に動く。

「イチ、ニ、サンッ!……ほらできた!」

「おぉー!やったねー!」

裕子さんは胸の前で小さく拍手をした。私は緩みそうになる頬を誤魔化そうと、顎のあたりを左手で擦った。この分なら意外と早くリプレイハズシをマスターできそうだ。だが、あまり早く上達されると、私の存在意義が無くなってしまうのだが……

「あぁー!もう!今度は下段受け!なんでリプレイばっかり引くの?」

「ホント、小役引かないですね」

「しかも下段受けって切れ目じゃない方の7狙うんでしょ?今度こそ無理だよ!先生お願い!」

裕子さんは顔の前で両手を合わせるポーズで懇願してきた。確かに、切れ目の裏側にある7を狙うのは難易度が高い。だが、これをできるようにしてこその『先生』ではないか。

「裕子さんって、子供の頃に何か楽器を習ってたことってありますか?」

「……初めて名前で呼んだね」

「え!?あ、えぇ!?」

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  • 「初めてジャグリーって呼んでくれたね……」「初めてジャグリーって呼んでくれたね……」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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