六本木ヒルズからの七転八倒

【恋慕編21】弘法にも筆のミステイク

←BACK【恋慕編20】ピアノ・レッスン

裕子さんの台はやはり高設定だったのだろう。順調にボーナスを引いていく。私の台はというと、8000円を投資したところでやっとビッグボーナスを引いてくれた。

ここからが腕の見せどころ。ウエイトを切らない高速リプレイハズシでカッコイイところを見せたい。三回目の子役ゲームがスタートし、いきなり上段受けリプレイがテンパイした。すかさず切れ目の7を狙ってリプレイをハズ……

「あぁ!!」

失態。いいところを見せようと焦ってしまったためか、切れ目の7の遥か手前にあるリプレイを上段に停止させてしまった。私の落胆をよそに、無情にも三回目のJACゲームがスタートした。

「先生!何やってんの!」

隣で見ていた裕子さんが、左手で私の肩を強く揺さぶりながら大笑いした。私は、全身の血液が顔中に集まり、耳まで紅潮しているのが分かった。穴があったら入りたいとはまさにこのことだ。だが、隣で笑う裕子さんの垂れ下がった目尻を見たら、十数枚のコインロスくらい安いものだと思えた。

ビッグ消化後、背伸びをするついでに背後のシマの様子を窺っていると、顔馴染みの店員さんと目が合った。その店員さんは、私と裕子さんの顔をわざとらしく何度も確認すると、訳知り顔で口の前に人差し指を立てた。何も秘密にしておかなければならない関係でもないのだが、普段とは違う一面を見られてしまったような気がして、気恥ずかしさを覚えた。

「ちょっと飲み物買ってくるけど、何がいい?」

不意に裕子さんが立ち上がった。

「え!あぁ、じゃあ……カフェオレをお願いします」

そう伝えると、裕子さんは笑顔で小さく二度頷き、自販機の方へと歩いて行った。

その後ろ姿を見届けながら、私はそろそろ『例の件』について切り出さなければならないと考えていた。

千夏さんのことだ。

→NEXT【恋慕編22】疑念、広がる

profile

長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
  • 性別:
  • 誕生日:
  • 血液型:
  • 出身地:
  • 好きなもの:
  • 嫌いなもの:
  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

calender

9月≫
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

戻る