六本木ヒルズからの七転八倒

【恋慕編22】疑念、広がる

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「カフェオレ、これでよかったかな?あと、お金はいらないからね。リプレイハズシ教えてくれたお礼!」

私が財布を取り出そうとしているのを見越してか、裕子さんはカフェオレを手渡しながらそう言った。私はそれを顔の前に掲げて、周囲の喧騒にかき消されないように裕子さんの耳元で「ありがとう」と伝えた。

しばらく、単調な通常ゲームが続いた。『GOGO!CHANCE』と書かれたランプが点灯していない今こそ、今日の私にとってはチャンスなのだ。私はカフェオレで喉を潤してから、裕子さんの方へと身体を傾けた。

「あの……こないだの合コ……じゃなくて飲み会に一緒に来てた人、いましたよね?」

「うん、千夏ね」

「そう、千夏さん。あの……千夏さんって……どんな人なんですかね?」

「千夏ぅ?うーん、そうだなぁ」

裕子さんは自分の台の方を向いたまま、淡々と通常ゲームを消化し続ける。

「おとなしくてイイ娘だと思うよ。どうしてそんなこと訊くの?」

「いや、別に。ちょっと気になって」

裕子さんはゲームに没頭しているようで、こちらを見ようとしない。私は構わず続けた。

「千夏さんって、髪長いですよねぇ。あんなに長い人、なかなかいないですよね」

「うん」

「千夏さんもスロット好きなんですよね?」

「知らない。たぶんそうじゃない」

さっきまでとは打って変わって、ぶっきらぼうな答えばかりが返ってくる。

「千夏さんって、仕事って何やってるのか知ってますか?」

「知らない。プー子じゃない?アタシもそうだし」

裕子さんの口が僅かに尖ったような気がした。どうやら二人とも仕事はしていないらしい。となると、生活費はどうやって捻出しているのだろうか。私の中で、疑念が広がっていく。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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