六本木ヒルズからの七転八倒

【恋慕編23】怒りの777

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「千夏さんって、一人暮らしなんですかね?」

「知らない。アタシは実家だけど」

裕子さんはこちらを見ようともせず、淡々と遊戯を続けながら僅かに首を傾げるだけだ。私は、美人局の首謀者であろう『足して20の男』に近づくため、さらに一歩踏み込んだ。

「千夏さんって、彼氏とかって……いるんですかね?」

下段に7がテンパイし、裕子さんの手が止まった。次の瞬間、裕子さんは今までにないくらいに強い力で右のストップボタンを叩いた。ガンッという鈍い音とともに、右リールの7がスルリと下段に停止した。生入りでのビッグボーナスだ。

私は驚きと祝福で口角を上げ、笑顔で千夏さんの横顔を見た。すると、裕子さんは体ごとこちらを向き、明らかに怪訝そうな表情で語気を強めた。

「そんなに千夏のことが気になるなら、本人に直接訊けばいいじゃん!」

「……え?」

予想外の言葉に私が呆気に取られていると、裕子さんはおもむろに席を立ち、店の出口の方へと歩いて行ってしまった。私は何が起こったのかを把握できず、シマの向こうへと消えていく裕子さんの後ろ姿を呆然と見送った。

隣でけたたましく鳴り響くファンファーレの音で、はたと我に返ることができた。私は慌てて裕子さんの背中を追った。いくつかのシマと景品カウンターを通り過ぎ、店の外に出たところで、なんとか裕子さんの腕を掴まえた。ピタリと歩みを止めた裕子さんは、眉を寄せてこちらを見上げた。

「何?千夏がいいんでしょ?千夏もスロット好きだって言ってたよ!千夏と打ちに来ればいいじゃない!」

私は、自分の愚かさにようやく気がついた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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