六本木ヒルズからの七転八倒

【恋慕編27】本性暴いちゃえばいいじゃん!

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「アタシもちょっと気になってたんだよね、千夏のこと」

訊けば、裕子さんが知る限り、千夏さんは仕事をしている様子は無いそうだ。それでどうやって生活のかを尋ねても、なんとなく誤魔化されてしまうという。

「そのわりには頻繁に海外旅行に行ってるし、スロットでも結構負けてるしね。よくお金続くなぁって思ってたんだ」

なるほど。確かにそれは気になるのだが、仕事をしていないのは裕子さんとて同じこと。その事を尋ねるべきかと考えていると、裕子さんからアッサリと答えが提示された。

「ちなみにアタシもプー子だけと、お父さんが金持ちなんだよね。アタシんチ、自由が丘に庭付きなんだよ。今度来る?お母さんもパチンコ好きなんだよ」

そう言うと、裕子さんは携帯電話を開いた。そこには、今より少しだけ若く見える裕子さんと、その腕の中に抱えられた白いチワワ、そして穏やかな表情を浮かべるご両親の姿があった。

裕子さんは、後ろめたさなど微塵も感じていないような屈託の無い笑顔をこちらに向けた。

「あー、仕事しろとか小言は無しね。アタシは今、人生の食事休憩を取っているのだよ。このお店は30分なんだ。短いね」

裕子さんは店内での注意事項が書かれた張り紙を指差して言った。その人生の食事休憩とやらは一体いつまで続くのか、という言葉はここでは飲み込むことにした。

私は、5ゲームほどの沈黙を挟んでから裕子さんの横顔を見つめた。

「ぶっちゃけ……美人局だと思いますか?千夏さんのこと」

裕子さんは右手に持っていたコインを全て台に投入したところで動きを止めた。じっとリールを見つめたまま身じろぎひとつしない。また怒らせてしまったかと、私が慌てて次の言葉を紡ごうとしたとき、裕子さんの唇が僅かに動きを見せた。

「わかんない。アタシと千夏って飲み会で知り合っただけだからさ、深いところまではお互いに知らないんだ。でも……」

そこまで言うと、裕子さんはおもむろにレバーを叩き、細く長い人差し指で第三停止ボタンネジった。

「わかんないんだったら、確かめればいいじゃん!アタシたちで!」

裕子さんは私の胸のあたりを指差して、上目遣いで笑った。同時に、パネル左下にあるGOGO!ランプが音も無く点灯した。

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  • いつだって、GOGO!ランプは美しいいつだって、GOGO!ランプは美しい

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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