六本木ヒルズからの七転八倒

【恋慕編30】多分『クロ』だよ!

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「もしもし、アタシだけど。今、大丈夫?」

スロットデートの翌日、仕事を終え家路を急いでいると、電話口の向こうから、裕子さんの声に耳をくすぐられた。

「もービックリだよ!今、千夏と電話で話したら『今度会って相談しよっか』だって!」

どうやら、裕子さんの『釣ざお』に千夏さんは食いついてきたようだ。

「最初はね、長崎くんのこと話しても全然乗ってこなくてさ。でもアタシが『お金貢がせて千夏みたいに豪遊したい!』とか言ったら、じゃあ協力しよっか?だって!アタシって凄くない!」

裕子さんは興奮気味に続ける。

「あの子は多分『クロ』だよ!アタシの勘だけどね」

裕子さんはすっかり探偵にでもなったかのように得意げな口調だ。だがその時、ある種の『違和感』のようなものが黒い霧となって私の頭の中を覆い尽くそうとしていた。

「で、いつ会うことになったんですか?」

「今度の日曜、西新宿の喫茶店だって!長崎くんも絶対来てよね!キャーどうしよう!緊張してきた!」

まるでアイドルのコンサートに行くことが決まった女子中学生のように、裕子さんは興奮しきりだ。

「もちろん僕も行きますけど……でも、裕子さんはそれでいいんですか?」

「え?何が?」

「だから……お互いそんなに深い付き合いではないとはいえ、友達なんですよね?千夏さんと」

私が尋ねると、裕子さんは「うーん」と唸った。携帯電話の向こうで、いつものように口を尖らせている姿が手に取るように分かった。

「でも……いいの」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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