六本木ヒルズからの七転八倒

【恋慕編37】「その言い方!」

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『着信 森裕子』

携帯電話を開いてみると、そこには裕子さんからの着信を知らせるメッセージが表示されていた。私は驚いて二人のいる方を向いたが、裕子さんは携帯電話をテーブルの上に置いたまま談笑を続けていた。

私は状況が飲み込めず、震え続ける携帯電話を握りしめ、辺りをキョロキョロと見回した。その時、厨房にいるマスターの姿が目に止まった。マスターはアルバイトの女性に何やら耳打ちをしている。それを見て私は、ようやく裕子さんの意図に気が付くことができた。

私は急いで携帯電話にイヤフォンを差し込み、送話口を指で塞いでから『応答』ボタンを押した。使い古した黒いイヤフォンからは、入り口近くの席で談笑する裕子さんと千夏さんの声が聴こえてきた。

「……ふーん。そういえばアタシね、こないだ長崎くんとスロット打ちに行ってきたんだよ」

「そうなんだ。どうだった?」

ノイズ混じりではあるが、携帯電話に差し込んだイヤフォンからは、二人の会話がしっかりと確認できる。

「まぁねー、なんだろ。スロットは上手かったけどね」

裕子さんは伏し目がちにストローでグラスの中の氷を掻き回している。

「でも、イマイチだったんでしょ?男として」

「その言い方!」

二人は一瞬だけ大きな声を出して笑った。マスターが怪訝そうな顔でそちらに視線を送った。それに気がついたわけではないだろうが、二人は周りを見回してバツが悪そうに首をすくめた。

「だって裕子が言ったんじゃん、こないだの電話で」

「そうだけどさ」

二人はまだ笑いが収まらない様子で、しばらく会話が途切れた。

裕子さんが私の事を『男としてイマイチ』と言っていたことが、トゲとなり私の心に突き刺さった。だが、それも全て千夏さんの本性を暴くための方便であると信じて、盗み聞きを続けた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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