六本木ヒルズからの七転八倒

【恋慕編38】内角一杯のストレート

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「じゃあ、長崎くんと付き合う気もないんだ?」

千夏さんは豪速球のストレートを裕子さんの胸もと一杯のインコースに投げ込んだ。いや、投げ込まれたのはむしろ私の方だったのかもしれない。私はその言葉を聞いた瞬間、仰け反りそうになってしまった。話の流れ的には当然出てくるであろう質問ではあった。だが、この質問に対する裕子さんの答えを聞くのは、正直怖かった。私は気を落ち着けるため、ホットカフェオレを口に運んだ。

「うーん……まぁ……そうだね」

右手に持っていたカップが一瞬滑り落ちそうになり、私は慌ててソーサーの上に置いた。カップとソーサーが喧嘩でもするようにぶつかり合い、『ガチャッ』と鈍い音を立てる。間の悪いことに、店内のBGMがちょうど途切れた瞬間だったため、その音が店内中に響き渡り、客達の視線が一斉にこちらに集まったような気がした。私は咄嗟に二人のいる方に背を向けるような格好で、左手を額に当てて顔を隠した。

裕子さんの今の発言は、あくまでも千夏さんを『釣る』ための方便であって、本心ではないハズだ。だが、そう思おうとすればするほど、裕子さんの言葉にリアリティを感じてしまう。

女性関係に疎い私が、女性の発言の真実や裏側を読み取ることなどできる気がしない。自分にとってネガティブな発言は全て真実で、ポジティブな発言は全てウソなのではないかとすら思えてきてしまう。

裕子さんは、本当は私のことをどう思っているのだろうか。私は一人頭を抱えたまま、裕子さんの次の言葉を待った。

このままでは、『千夏さんの本性を暴く』という当初の目的が変わってしまいそうだ。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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