六本木ヒルズからの七転八倒

【恋慕編41】キャッシング枠くらいあるでしょ

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「だからね、裕子が本気でお金欲しいっていうんなら、私が協力してあげてもいいよ」

千夏さんの表情はこちらから窺い知ることはできないが、その声の調子は実に明るく、嬉々としているように聞こえた。

「もちろん、私の知り合いに協力してもらわなきゃいけないから、その人にもちょっとだけ『お礼』してあげないといけないけどね」

千夏さんはまたお冷を口にすると、顔の前で親指と人指し指の間を1センチほど開けて「ちょっとでいいけどね」とイタズラっぽく言った。

「……へー。そうなんだ。で……さあ。その、誠意っていうのは、結局のところいくらくらいなんだろう。アタシそういうの全然わかんないからさ……」

裕子さんは動揺を悟られないよう、必死で平静を装っているようだった。

「そうだなー。ぶっちゃけ、長崎くんがどれくらいお金を用意できるかって話になっちゃうんだよね。まぁ普通にキャッシングの枠くらいはあるだろうから……」

そう言うと、千夏さんは右手を大きく広げた。

「50……くらいは長崎くんから引っ張れたとして、アタシの知り合いには……そうだなー、30ってところじゃないかな。うまくいけば、裕子は何もしなくても20万くらいは手に入ることになるよ!オイシイじゃん!」

千夏さんの右手が20万を表すVサインになったところで、お冷を注ぎにきたマスターに視界を遮られた。それと同時に、イヤフォンから聞こえていた二人の会話が途切れてしまった。いや、正確には違った。会話が途切れたのではなく、携帯電話の通話が切れてしまっていたのだ。

私が切ったわけでもなく、もちろんマスターが何かしらの操作をしたわけでもない。となると、裕子さんが自らの意志で切ったとしか考えられない。突然のことに私は動揺したが、ひとまず冷静に耳に付けていたイヤフォンを外し、テーブルへと静かに置いた。

マスターがお冷を注ぎ終わり、その場を離れると、遮られていた視界が回復した。

そこには、予想外の光景が広がっていた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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