六本木ヒルズからの七転八倒

【恋慕編42】千夏さん、お久しぶり……

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「な、長崎くん!!……こ、この子ッ!!」

裕子さんは椅子から立ち上がり、目の前にいる千夏さんの顔に向けて、人差し指を突きつけていた。その表情は遠目からでもハッキリと分かるほど強張り、その声は店内にいる全ての人間の注目を集めるほど大きく、震え、上ずっていた。裕子さんはそこから先の言葉が出てこず、千夏さんを指差したまま、私のほうへと顔を向けた。

私は慌てて立ち上がり、二人のいるテーブルへと駆け寄った。裕子さんは隣に立った私の二の腕を強く握りしめた。その目は涙で潤み、噛み締めた下唇は小刻みに震えていた。

その一部始終を、千夏さんは唖然とした表情で口をぽかんと開けて眺めていた。

「千夏さん、お久しぶり……でもないですね。飲み会ぶりです」

私はそう言って、緑のハンチング帽と伊達メガネを取った。すると、千夏さんは視線を逸らしてほくそ笑んだ。

「久しぶりね。何?何か用?ダッサイ帽子かぶって」

千夏さんは椅子に深く座り直して足を組み、ふてぶてしい態度で尋ねてきた。もはや以前の千夏さんの面影はどこにもない。

「全部聞いてたんですよ、向こうの席でね」

私が店の一番奥のテーブル席を指差すと、千夏さんもそちらに顔を向けた。

「ふーん。で、何?それが何だっていうの?」

その開き直った態度に、私は全身の血液が頭へと逆流していくような感覚に襲われた。あんたのせいで堀口は………。私は次の言葉をぶつけるために一度大きく深呼吸した。その時、隣で立ちすくんでいた裕子さんが、ゆっくりと口を開いた。

「千夏……やっぱり、美人局なんかやってたの?本当に?」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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