六本木ヒルズからの七転八倒

【恋慕編44】めり込む、親指

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「痛ってぇ!!!」

私は思わず悲鳴にも似た声を張り上げてしまった。両肩の肩甲骨のあたりに刺すような痛みを感じた。すぐに振り返ろうとすると、私の肩越しから覗きこむように、何者かの顔が近づいてきた。

「お兄さん、ウチの千夏に何か御用でしょうか?」

声の主は、見たことのない男だった。身長は185cmはあるだろうか。イタリア人のように彫りが深く面長で、黒髪をオールバックで纏めている。その口調は穏やかで紳士的ではあったが、落ち窪んだ瞳の奥は明らかに笑っていなかった。

「コージ!こいつらムカつくんだけど!」

この男はコージというらしい。堀口が美人局に遭ったときの『足して20の男』とは風貌がかなり異なる。今はこの男が美人局の相棒なのだろうか。

「お客様……申し訳ございませんが、店内ではお静かに……」

「あー店長さん、悪いね。すぐ終わるからさ」

店長の静止も軽くあしらわれてしまった。コージの両手がまたしても私の両肩に重くのしかかる。その両手の親指が私の肩甲骨に深く突き刺さり、冷や汗が額から頬に伝っていくのを感じた。

「千夏もダメだよ!こんなガキの相手なんかしてちゃ!ガキは効率悪いって言ったでしょ?」

「だってー、小銭になるかなと思ったんだもん……」

「そうかそうか、それだったら仕方ないね。でももう使い物にならないんでしょ?コイツら」

コージがそう言うと、千夏さんは無言で頷いた。すると、コージは両手にさらに力を込めて私の両肩を締め付けてきた。

「痛っっ!!」

思わず身体が仰け反った。隣では裕子さんが今にも泣き出しそうな顔で私のことを見つめている。私が声を殺して激痛に耐えていると、耳元でコージが囁いた。

「よく聞けよ……ガキィ」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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