六本木ヒルズからの七転八倒

【恋慕編45】シノギのルール

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「他人の商売の邪魔しちゃマズイってのは、お前くらいのガキでも理解できるよな?」

「……はい」

「今後一切、俺と千夏の前に姿みせんじゃねーぞ。視界に入るだけでもダメだ。いいな?」

「は……はい」

「もし、次お前らの顔見かけたら、キッチリ骨の髄までしゃぶらせてもらうからな。いいな?」

「はい、わかりました」

「よーし」

コージは私の肩から左手だけを外し、千夏さんの飲みかけのコーヒーを手に取った。それを鼻の近くで二周ほど回し、香りを堪能した後、全てを飲み干した。

「ココのコーヒー、うまかっただろ?」

そう言うと、コージはまた私の両肩に手を乗せ、今度は肩をゆっくりと揉みほぐしはじめた。

「じゃあ今日は俺の奢りだ。わかったら今すぐ消えろ!」

「痛ッッ!!」

コージは渾身の力を込めて私の肩甲骨に親指を突き立てると、パッと両手を離した。やっとコージの両手から開放された私は、力なく椅子へと座り込んでしまった。

「大丈夫?」

目に涙を一杯にためた裕子さんの顔を見て、私は胸を締め付けられた。

「大丈夫です。行きましょうか……」

私は裕子さんの手首を掴み、立ち上がった。コージはニヤニヤと品の無い笑みを浮かべながら、どうぞと言わんばかりに通路を開けた。店内の客が全員、固唾を飲んで見守っている。マスターも心配そうに眉をハの字に歪めている。中途半端な探偵ごっこのおかげで、多くの人に迷惑を掛けてしまった。

店内にはジャズアレンジされたビートルズの曲が流れていた。

――この曲……なんて曲名だったかな?

緊張から開放されたからだろうか。そんな、どうでもよい事が頭をよぎった。とにかく、私は裕子さんを連れて、無事に店の外へ出ることができた。

我々の探偵ごっこは、終わった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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