六本木ヒルズからの七転八倒

【痔瘻編02】苦悶の表情を浮かべる、働き盛り

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朝八時半。診察開始まであと三十分もあるというのに、院内は受診を待つ患者でごった返していた。スリッパに履き替えた私は、保険証を受付へと差し出した。

「あの……初診なんですけど」

「当院は肛門科になりますが、お間違いないでしょうか?」

妙齢の女性看護師さんの口から発せられた「肛門科」の言葉に、若干の気恥ずかしさを覚えた。だが、相手は仕事で毎日何百回と口にしているのだから、恥ずかしがっているのは私だけだ。気を取り直して「はい、大丈夫です」と答えた。

「本日はどうなさいました?」

「あの、昨日の夜にですね、あの……お尻の……横あたりに、その……イボのような出来物ができているのに気が付きまして……」

「そうですか。それではこちらに記入した後に、そちらにお掛けになってお待ちください」

看護師さんは問診票を手渡すと、さっさと自分の仕事へと戻ってしまった。私は問診表に、いつからどのあたりに何があるのか、などの情報を詳細に記入し、受付へと戻した。

待合室のソファに腰掛けて順番を待っていると、診察室から一人の男性が出てきた。全身を黒のジャージで身を包み、筋肉質でガッチリとした長身。まさに働き盛りの四十代といった感じだ。だが、その端正な風貌とは裏腹に、しきりに腰のあたりを擦りながら、表情は苦痛に歪んでいた。

男性は、待合室のソファに片足だけを正座するような体勢で座ったかと思うと、「ツッ……」と小さな声を漏らして立ち上がった。その後も、壁に手をついて腰を擦りながら、時折「ツッ……アァ……クッ」など、声にならない声を漏らし、苦悶の表情を浮かべている。

一体、あの診察室の中で何があったというのか……。背中に汗が伝った。
その時、病院独特のアノ聞き取りにくいアナウンスが、待合室に響き渡った。

「ナガサキさん、ナガサキショウゴさん。第三診察室へお入りください」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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