六本木ヒルズからの七転八倒

【痔瘻編03】ずり下げられたトランクス

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「失礼します」

第三診察室のドアをおそるおそる開けると、そこには七十歳は優に超えているであろう老人が、穏やかな笑みを浮かべていた。その老人は白衣をまとい、手には医療用の手袋を嵌めていたので、医師であることはすぐにわかった。胸のネームプレートには「院長 岡田大志」とある。この病院の院長のようだが、こんな老人で大丈夫なのだろうか、という小さな不安が私の心の中によぎったことは事実だ。

「はい、こんにちは。じゃあそちらに」

院長は、私に椅子に座るように促し、先ほど書いた問診票に目を落とした。私は両手を膝の上に乗せて姿勢を正し、あたりを見回した。院長の机の逆側には小さめのベッドがひとつ。それを仕切るためのカーテン。肛門科といえど、内科や外科とほとんど変わりない診察室の風景に、私は拍子抜けしてしまった。

「お尻の横にイボのような……出来物……ですか。わかりました。それでは一度診てみましょうかね」

院長の言葉が終わるか終わらないかのタイミングで、奥に控えていた妙齢の女性の看護師さんが、ベッドの横の壁に貼ってある紙を指差した。

「ズボンとパンツを膝まで下ろして、あそこにある絵と同じ体勢になってください。準備ができたら声掛けてくださいね」

看護師さんはそう言うと、勢い良く仕切りのカーテンを閉めた。

もちろん、こうなることは予想していたし、当然のことだ。なにしろココは肛門科だ。肛門を見せなくてはお話にならない。

私は覚悟を決め、ベルトに手をかけた。ズボンとトランクスを膝まで下げ、壁のほうを向いて横向きに寝転がる。その状態で、タオルを腰から膝のあたりに掛ける。そして、膝をお腹の方に抱え込むような体勢を取る。これで、壁に貼られている絵と同じ体勢になった。

「あ……準備、できました……」

私がそう言うと、シャーっとカーテンが開けられる無機質な音が耳に届いた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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