六本木ヒルズからの七転八倒

【痔瘻編12】「そう、エグるの。グルッとね」

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「エ、エグるんですか!?」

「そう、エグるの。グルッとね」

院長は人差し指をくるりと回す仕草をした。『エグる』という響きに狼狽している私をよそに、院長は続けた。

「ろう管をエグり取った後はですね、軽くしか縫わないんですよ、普通の手術と違ってね。長崎さんは以前に何らかの手術を受けたことはありますか?」

私は腹のあたりをさすりながら、半年ほど前に虫垂炎――いわゆる盲腸の手術を受けたことを伝えた。

「あー、腹腔鏡手術ですね。その時は何日くらい入院しました?三日か四日くらいですか?」

術後三日目に退院したことを伝えると、院長は二度頷いた。

「虫垂炎の手術みたいに、ギュッと縫ってしまえば比較的早く退院できるんですけどね、この『ろう管』の手術はそういうわけにはいかないんですよ」

院長は右手の親指と人差し指で縫い針を持つ格好をし、空中を縫ってみせた。

「ろう管をエグり取った後に完全に縫合してしまうと、その箇所に菌が入ってしまったときに困るんですよ。また抜糸しなくてはいけなくなりますからね。ですので、軽く縫っておいて、肉が盛り上がるのを待つんです」

肉が盛り上がる、という言葉に、私はなんとも言えない気持ち悪さを感じ、思わず眉間にシワを寄せてしまった。そんな私の反応を気にも留めず、院長は続けた。

「ですので、一週間から十日ほどの入院が必要になるんです。まぁ実際に完治するまでには一ヶ月以上かかりますけどね」

「……一ヶ月、ですか」

想像以上に過酷な過程になりそうだと理解した私は、院長の机の上に置かれた卓上カレンダーに目を落とした。私の落胆を察した院長は、私の左肩に手を置き「がんばりましょう」と声をかけてくれた。その後ろでは妙齢の女性看護師がたおやかな笑顔を浮かべていた。

入院の日程は一ヶ月後に決定した。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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