六本木ヒルズからの七転八倒

【痔瘻編17】エッ!もう終わり!?

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手術台にうつ伏せにされた私は、ぼんやりと床の模様を眺めていた。私の臀部はすでにあらわになっている。時折、医師と看護師の会話が聞こえてくるが、内容までは聞き取ることはできなかった。

しかし、麻酔というものは凄いなと、あらためて感じた。今、私の肛門にはメスが入れられ、ろう管をエグり取る作業が行われているのであろうが、全く感覚が無い。もちろん、そのための麻酔なのだから当然といえば当然なのだが。

「はい、ナガサキさん。無事終わりましたよー。まだ起き上がらないでください!寝たままで結構ですからね」

岡田先生の優しい声が聞こえた。事前の説明の通り、手術自体は本当にあっという間に終わってしまった。おそらく十分から十五分程度だったのではないだろうか。痛みや苦しさもほとんどと言っていいほど無かった。もちろん、二度の麻酔を除いてだが。

私はベッドに寝かされたままの状態で病室へと戻された。

「ナガサキさん。くれぐれも自力で立ち上がったりしないでくださいよ!説明会での話、思い出してくださいね!」

ポニーテールの看護師は、いたずらっ子を叱るように私に言いつけてから、病室から去っていった。事前の説明会でも口を酸っぱくして言われたことがあった。

――手術後は、麻酔が完全に切れるまでは絶対に立ち歩かないように!

頚椎は下半身の神経を司ると同時に、脳をプカプカと浮かべている液体も司っているそうだ。そのため、頚椎麻酔を打つと、下半身が麻痺すると同時に、脳を浮かべる液体にも影響が出るらしい。もちろん、麻酔が切れるまで安静にしていれば問題は無いのだが、それを無視して立ち歩いてしまうと……

「以前、麻酔が完全に切れていない状態でトイレに立った患者さんがいらっしゃいました。その患者さんは、便器の前に立ったところで気を失ったそうです。そのまま便器のフチに顔面を強打して、前歯を三本折ってしまいました」

こんな恐ろしい話を聞かされては、言いつけを無視するはずもない。私はそれから三時間ほど、病室の天井の模様が何に見えるかを考え続けた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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