六本木ヒルズからの七転八倒

【落札編1】京王線新宿駅から

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新宿で京王線に乗り換える。時刻はまだ午前八時だ。もしこれが平日ならば、恐ろしいほどの人がホームに溢れかえっているのだろうが、今日は日曜日だ。しかも都心から郊外へと向かう下りの列車の中は空席が目立った。

「ふぅ」

ひとつため息を吐き出して、座席に腰掛ける。

「ふー」

私の真似をするように、裕子がとなりでため息をついて椅子にどっかりと座った。

「着いたら起こしてね」

まったくこちらを見ようともせず、裕子は腕組みをして言い放った。競馬に行きたいと言い出したのはそっちなのに、この態度である。こんなことなら新宿の場外馬券売り場で事足りたのではないかと、早くも後悔し始めた。

私は、肩に乗る裕子の頭を動かさないように、そっとポケットから携帯電話を取り出し、到着予定時刻にバイブレーション機能をセットした。

まぶたに分銅がぶら下げられているように、重い。
向かいの席に座ったご老人が広げた新聞が『日刊スポーツ』であることを確認したあたりで、私の意識は薄れていった。

――『次は、東府中、東府中に到着です』

一瞬まばたきをしただけのつもりだった。だが、時間はいつの間にか四十分ほど経過していたようだ。

――『府中競馬正門前へお越しのお客様は、次の駅でお乗換えください』

それにしても、この「目的の駅の直前でキッチリ目が覚める」という現象は一体何なのだろうか。実に不思議だ。

私は、裕子を起こしがてら、肩を揺らしながらポケットから携帯電話を取り出した。すると、ちょうどセットしておいたバイブが蠢きだした。

「次で降りますよ」

そう言って、私は裕子の肩を揺らした。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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