六本木ヒルズからの七転八倒

【落札編12】車内はひじき

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裕子との競馬デートをそつなくこなし帰宅すると、夕食後にすぐに眠りこけてしまった。やはり朝から一日中競馬をやるのは本当に疲れると再確認。次は場外馬券売り場でお茶を濁そうと心に誓う。

翌朝。夢か現か判断できない中、脳内に直接語りかけるように誰かの声が聞こえてきた。

――市ヶ谷駅で発生した人身事故の影響で……

私は無理矢理目をこじ開けた。目の前にはグレーの物体が並んでいた。顔をこすり意識を呼び戻すと、それがサラリーマンのスラックスであることをようやく認識できた。

そうだ、私は今、職場に向かうために半蔵門線に乗っていたのだった。いつも同じ駅でおりる女性の前に陣取り、首尾よく座ることができた私は、すぐに眠りに落ちてしまったようだ。

首を回して窓の外をに顔を向ける。今、何駅なのか分からない。仕方なく携帯電話を取り出して時刻を確認する。いつも最寄り駅に到着する時刻にはなっていなかった。

そこから最寄り駅に到着するまでの十分足らずの時間を眠らずに過ごすことは、実に困難なミッションだった。だが、万が一にでも寝過ごして遅刻でもしようものなら山倉から何を言われるかわからないと思うことで、かろうじて起きていることができた。

水天宮前駅に到着すると、満員の車内から乗客が流れ出た。そのほとんどが黒かグレーのスーツを着たサラリーマンで、ほんの僅かに赤系のスーツを着た女性だった。その様はまるで、ひじきの煮物のようだ。

私もひじきの一員となって、ホームへと降り立った。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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