六本木ヒルズからの七転八倒

【落札編13】記憶領域に残る、青

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改札を抜け地上に出ると、四十分ぶりくらいの空を見ることができた。
職場に向かって歩く。途中、コンビニでカフェオレを購入し、準備は万端だ。これからまた一週間が始まる。そう思うと、いくぶん足が重くなったように感じた。

会社が入居するビルまで十数メートルにさしかかったところでふと前方に目をやると、ガードレールに腰掛けた男の姿が見えた。

その男は茶色のジャケットにグレーのスラックスに身を包み、一心不乱に携帯電話をいじっている。

見慣れない男を警戒しながらさらに近づく。男は携帯電話から目を離さない。
通り過ぎる瞬間に男の顔を凝視する。その男はどこか幼さの残る顔つきをしており、スーツも着慣れている感がまったく無かった。

おそらく、どこかの会社の新入社員が営業の仕事をサボっているのだろうと勝手に決めつけた。

私は会社の入居するビルの前まで来てから、ふと横目でその男をもう一度見やった。男はまだ携帯電話に夢中だ。一体その携帯に何があるというのか。ここまでくると中毒といっても過言ではないだろう。

私は半ば呆れつつ視線を外し、ビルに入ろうと歩き始めた。
だが次の瞬間、脳内の記憶領域で何かが繋がったような感覚に襲われた。

私は思わず足を止めた。そして、何かに導かれるように、あの男の方をもう一度見直した。男は変わらず携帯電話とにらめっこ中だ。

だが、私の記憶が反応したのはそこではなかったのだ。

男の足元には、無造作に青いリュックが置かれていた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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