六本木ヒルズからの七転八倒

【落札編14】得も言われぬ焦燥感

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「おはようございまーす」

仕事場に入り、気の抜けた挨拶を投げかける。ウイッスなどという体育会系男子のような返事が轟く中、美瑠希の声だけが穏やかに返ってきた。

「おはよー」

視線はパソコンのモニタに向いたままだが、男の声しか聞こえないよりははるかにマシだ。

私はいつも通り窓際の席に陣取り、パソコンの電源を入れた。ハードディスクが回り出す音を聞きながら、カフェオレを開ける。また、一週間が始まると思うと、少し気分が重くなった。

だが、今日は仕事場の雰囲気がいつもと少しだけ違っているように感じた。皆がどこか浮き足立っているような気がしたのだ。

先日から副管理者に昇進した美瑠希は、始業時間前だというのに何やらモニタとにらめっこしながら一心不乱にキーボードを叩いている。自分以外の――特に上司が奏でるキーボードの音というのは、得も言われぬ焦燥感を覚える。

そんな感覚をカフェオレで腹の底まで流し込み、ネットワークにログインした。

仕事で使用するツールを次々に立ち上げる。最近、このパソコンも動作が緩慢になってきたように感じる。そろそろ買い替えどきなのではないだろうか。

ツールが全て立ち上がり、本腰を入れて仕事を始めようと椅子に深く座り直した時、部屋のドアが開く音が聞こえた。

私は仕事に集中しているアピールを兼ねて、あえてそちらを振り向くことをしなかった。すると、開いたドアの方から張りのある男の声が聞こえてきた。

「みんな、おはよう。ちょっと作業の手を止めてくれるか」

声の主は、管理者の本田だった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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