六本木ヒルズからの七転八倒

【落札編15】大丈夫か、コイツ。

←BACKパソコン版【落札編14】得も言われぬ焦燥感
←BACKスマホ版【落札編14】得も言われぬ焦燥感

振り返ると、ドアの前に本田ともう一人の男が立っていた。
その姿を見て、私は「まさか」という思いと「やはり」という思いが胸のあたりを駆け巡った。

本田の隣に立っていたのは、今朝見かけたガードレールに腰掛けていた男だったのだ。その男の右手には、使い古されたヨレヨレの青いリュックが握られていた。

「こないだから新人のバイト君が入るって言ってたと思うけど……こちらがその彼。今日から入る『塩村克也』君ね」

本田は塩村の肩に軽く手を乗せて言った。
塩村ははにかんだような笑顔を見せて僅かに会釈した。

「じゃあ、簡単でいいから自己紹介して」

本田が塩村に促す。
塩村は『そんな無茶ブリする!?』とでも言いたげに目を大きく見開いて、自分の顎のあたりを指差した。
初出勤の日に自己紹介を促されることがそんなに意外だったというのだろうか。私はなんとなく『大丈夫か、コイツ』と思ってしまった。

「あ……えっと……塩村克也です。よろしくお願いします……」

それだけ言うと、室内に沈黙が流れた。その沈黙に耐えかねたように塩村が助けを求めるように本田の顔を覗き込んだ。

「ん?そんだけ?」

「あ……まだ何か言ったほうがいいですか……いいですよね……」

塩村はボソボソと聞き取りにくい声でつぶやいた。正直、先が思いやられる。

「いや、別にいいんだけど。それじゃあ自己紹介も終わったってことで、みんなよろしく頼むよ。美瑠希、後はお願いね」

本田は副管理者席に座る美瑠希に向かって、爽やかに右手を挙げた。
美瑠希は覚悟を決めたように口を真一文字に結んで頷いた。

→NEXTパソコン版【落札編16】嫌な予感
→NEXTスマホ版【落札編16】嫌な予感

profile

長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
  • 性別:
  • 誕生日:
  • 血液型:
  • 出身地:
  • 好きなもの:
  • 嫌いなもの:
  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

calender

9月≫
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

戻る