六本木ヒルズからの七転八倒

【落札編16】嫌な予感

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塩村を置き去りにするように、本田は本社へ行くと言い残して部屋から出て行ってしまった。最近、本田はほぼ毎日のように本社へと出向いている。ここまで続くと実は外でサボっているのではないかと疑いたくなるレベルだ。

「それじゃあ……塩村さん」

ドアの前で立ちすくむ塩村に向かって、美瑠希が声を掛けた。
塩村は小走りで美瑠希の傍らへと移動した。背中を丸めてちょこまかと動くその雰囲気は、昨日競馬場で見た青年と同一人物だとはどうしても思えなかった。

「とりあえず……えーっと」

美瑠希がパソコンのモニタに向かってつぶやいた。
私はひとまず彼らのことを忘れて自分の仕事に取りかかることにした。

ブラインドの隙間から朝の光が差し込み、デスクの奥の方にストライプの柄を作る。
この映像を見ると、「嗚呼、今日も一日が始まるのだな」と気分が少しだけ落ち込む。だが同時に、この程度の楽な仕事で毎朝落ち込んでいたら他の仕事に就くなど不可能だろうし、その先にはまたスロプーの未来しか待っていないなと思い返す。

自分の中の小さな葛藤をカフェオレで腹の底に沈めて、キーボードを叩き始めた。

「長崎さん、ちょっといいかな」

最初のエンターキーを押すか押さないかのタイミングで、美瑠希の声が飛んできた。
振り返ると、美瑠希が申し訳無さそうな顔で頷きながら、こちらに手招きをしていた。

私は嫌な予感を抱えつつ、静かに席を立った。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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