六本木ヒルズからの七転八倒

【落札編17】『それ以上は言うな』

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いわゆる『ボス席』に座る美瑠希を挟んで、塩村と対峙した。彼は少しだけ顔をこわばらせたように思えたが、それが私と対面したからなのか、それとも初出勤で緊張しているだけなのかはわからなかった。

「こちら、長崎さん」

美瑠希が私の胸元で手のひらを上に向けるポーズを取って、塩村に紹介した。

「どーも、長崎です。よろしくお願いします」

私はあえて軽いノリで挨拶をしてみた。この職場はそもそも堅苦しい雰囲気ではないし、新人バイト君の緊張をほぐしてあげるのも先輩の勤めだと思ったからだ。

「どうも、塩村です。……初めまして」

塩村は先ほどの自己紹介よりもいくぶん流暢に会釈をした。
それと同時に、彼の口から出た『初めまして』という言葉に何やら含みがあるように思えた。

やはり彼は昨日の競馬場の男で間違いないのだろうか。そして、彼は私のことを覚えているのだろうか。

それを確かめるべく、私は口角を大きく上げて『敵意は無い』アピールをした上で彼に尋ねた。

「塩村さんって……昨日さぁ」

「あっ!!」

私の言葉を遮って、彼はスタッカートの効いた小さな悲鳴を上げ、一瞬だけあごの前で人差し指を立てた。どうやら『それ以上は言うな』ということのようだ。
彼の空気を察して、私はそこで言葉を止めた。

「あれ?二人はお知り合い?」

美瑠希が私と塩村の顔を交互に見た。

塩村は即座に首を横に振った。
私は黙って小首を傾げた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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