六本木ヒルズからの七転八倒

【落札編18】無意味な研修初日

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「そっか。じゃあ早速なんだけど、塩村さんの新人研修をお願いしたいんだけど」

「俺が!?」

突然の依頼に驚いて、喉のボリュームつまみが壊れたように大きな声を出してしまった。

「そう。イヤ?」

美瑠希が上目遣いで私の顔を覗き込んできた。その目で見つめられるとイヤとは言えない。

「イヤ……じゃないけど」

「じゃあお願いね」

美瑠希はそう言って私の肘のあたりを軽く叩いた。
まがりなりとも上司から仕事を任されたのだから、合理的根拠も無しに断ることなどできるはずもない。私は塩村の顔をもう一度見やった。
塩村はバツの悪そうな顔で小さく会釈した。

私はあごを擦りながら自席の方を振り返った。

「じゃあ……俺の隣の席でいいかな」

「そうね。お願い」

「何から教えればいいの?やっぱり『アダルト未成年』から?」

「そうなんだけど……実はまだ塩村さん用のアカウントの申請が通ってなくて、業務ツールが全部使えないんだよね」

「そうなの!?」

美瑠希は申し訳無さそうに眉を曲げて頷いた。
業務ツールを使えなければ、オークション利用者からの通報をチェックすることもできないし、キーワード検索からの削除作業もできない。要するに、仕事のほとんどができないということだ。

「じゃあ……何すんの?」

私が尋ねると、美瑠希は頬に人差し指をあてて言った。

「長崎さんの仕事ぶりを隣で見ててもらう」

私は思わず脱力してガックリと肩を落とした。実に意味の薄い研修初日だ。
私は美瑠希に親指を立てて全てを了承してから、塩村を自席の隣へ座るように促した。

てくてくと歩いて移動する塩村の肩から青いリュックが降ろされた。
近くで見ると、それは思った以上に汚れていた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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