六本木ヒルズからの七転八倒

【落札編19】アダルトカテゴリ攻撃

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「とりあえず、こっちに座って」

私は塩村を隣の席に座るように促した。
塩村は青いリュックを背もたれに掛け、椅子に腰を下ろした。

私も自席に腰を降ろしてからカフェオレを一口だけ喉に流し込んだ。いつもより甘く感じる。

塩村の方に顔を向ける。そこは少し前まで快人が座っていた席だ。快人が仕事を辞めてから、その席は誰も使っていなかった。久しぶりに左隣りに人がいる感覚に、どこか懐かしさを覚えた。

「それじゃあ……」

私が少しだけ椅子を移動させて塩村のそばへと近づいた。
すると、彼の方からおもむろに顔を近づけてきて、私の耳元で手のひらを立てた。

「ダメですよ」

「は?」

塩村はかすれるほど小さな声で言った。

「何がよ?」

私が問いただすと、塩村は美瑠希の方を一瞥してから続けた。

「『昨日競馬場にいただろ』って、さっき言おうとしましたよね?」

「したよ」

たったの三文字の返答だが、言外にたっぷりと『それの何が悪いんだよ』という感情を込めた。

「勘弁してくださいよ、新しい職場に入っていきなりギャンブル中毒みたいに思われたらイメージ悪いじゃないですか」

塩村は『理解できるでしょ』とでも言わんばかりに口元を曲げてニヤつかせた。
だが、パチスロで生活してきた私にとってはちゃんちゃら可笑しいと言わざるをえない。

それに、今まさに彼が始めようとしている仕事は、ネットオークションの監視業務なのだ。ギャンブルぐらいでガタガタ言うような人間では一日で尻尾を巻いて逃げ出すような出品の数々を目にすることになるはずだ。

私は塩村の言葉に無言で頷いてから、おもむろにアダルトカテゴリを表示させた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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