六本木ヒルズからの七転八倒

【落札編2】ゴール前、絶叫するために

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「みんな競馬に行くんだね」

向かいのホームで待ち構える『府中競馬正門前行き』の電車に乗り込むと、裕子はあくびを噛み殺しながらつぶやいた。

「そりゃそうだ。これに乗ったら最後、競馬場にしか行かないんだから」

「そっか。それにしても、見てよ。乗ってる人の全員が競馬新聞広げてるんだよ。何?このダメ人間護送列車は?こんなことじゃあ日本の未来は暗いね」

裕子は私の耳元ででささやいた。

「いや、その一員に俺たちも含まれてるんだけど」

「まさかそんなご冗談を。そんなことより正吾、新聞見せて」

そう言って、裕子は私の膝のあたりとポンポンと叩いた。
私はバッグの中から四つ折りにされた『競馬エイト』を取り出した。競馬新聞といえば、我が家では競馬エイトと決まっていた。カラーで見やすく必要な情報が見つけやすい!!……というのは後付で、実際には初めて買った競馬新聞が競馬エイトだったので、その後もなんとなく買っているというだけにすぎない。要するに惰性だ。

「今日は武豊はいないの?」

裕子は、今日のメインレースの馬柱を凝視している。

「さぁ。そもそも武豊は関西所属の騎手だからね。今日は東京には乗りに来てないんじゃない」

「ふーん、そういうものなんだ」

裕子の馬券戦術――というほど大層なものではないが――は、いわゆる『ジョッキー買い』だ。リーディング上位の騎手と、その日に好成績を上げている騎手を織り交ぜて買うことが多い。

裕子曰く、馬ではなく騎手で買う理由は「ゴール前で叫びやすいから」だそうだ。実に裕子らしい。

たったひと駅だけの旅を終え、府中競馬正門前駅に到着した。
改札を抜けると、指定席を求めるファンの列が目の前に飛び込んできた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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