六本木ヒルズからの七転八倒

【落札編28】むしろそれくらいが、良い

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それからしばらくは、塩村に日常業務を説明しながらの作業が続いた。
やっていることは普段と変わらないか、それよりも簡単なものだったので非常に楽ではあるのだが、やはり他人に見られながら仕事をするというのは面倒なものだ。

知らず知らずのうちに身体に力が入っていたのか、肩コリを感じ始めた。一旦キーボードから手を離し、背伸びをする。隣の塩村も前のめりだった身体を緩めた。

ふとモニタの右下に目をやると、時刻はあと五分で十二時になるところだった。
私は椅子を180度回転させて、美瑠希の方へと身体を向けた。

「彼の食事休憩はどうするの?」

私は親指を塩村の方へと向けて、美瑠希に尋ねた。
美瑠希はすっかり忘れていたという顔で眉を跳ね上げた。

「そうね。ちょうどいい時間だし、今から一時間休憩取ってもらえますか」

美瑠希は塩村の顔を見て言った。
塩村は小さく「はい」と答えて席を立とうとした。

「一緒に行くの?」

美瑠希は人差し指で私と塩村を交互に指して、いたずらっぽく言った。

「いや、俺はまだもう少し仕事があるから。あとで取るよ」

私はあらかじめ用意しておいたセリフで返した。
美瑠希は――そうでしょうね――とでも言いたげな顔で小さく頷いた。

「じゃあ、行ってきます」

塩村は軽く会釈をして部屋を出て行った。
ドアが閉まるのを確認すると、美瑠希が私の席へと歩み寄ってきた。

「彼はどんな感じ?」

小首をかしげる美瑠希に、私はわざとらしく眉をひそめて見せた。

「正直、コイツ大丈夫か?って気もするけど……むしろそれくらいの方がこの職場には合ってるかもね」

私は率直な感想を美瑠希に伝えた。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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