六本木ヒルズからの七転八倒

【落札編31】「30万ッス」

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会議室に入ると、パンを頬張る男がひとりいた。その男はチラリとこちらを一瞥したが、すぐに手元の雑誌へと視線を落とした。確か彼は数ヶ月前から別の部署に入ってきたヤツだ。ほとんど会話を交わしたことはないが、なんとなく暗い印象の男だった。

私はその男と一番遠いテーブルにコンビニ袋を置くと、部屋の隅に設置されている自販機へと向かった。

「何飲む?」

「奢ってくれるんですか?」

「いいよ」

「マジっすか。じゃあコーラでお願いします」

やはり奢る展開になってしまった。とはいえ、自販機の前に立って「何飲む」と尋ねれば、それ以外の選択肢など無いも同然だ。彼の分のコーラと自分のカフェオレを購入して席に戻った。

「スイマセン、ありがとうございます」

塩村はペコペコと頭を下げながらコーラを受け取った。こう言っては何だが、コーラ一本で後輩を手懐けられるならば安いものかもしれない。

コンビニ袋から弁当を取り出し、一緒に買っておいたお茶を一口含んだ。この時点でようやくカフェオレは食後に買えばよかったということに気づいた。

「ところで、さっき何か言ってなかったっけ?」

弁当の包装を乱暴に開けつつ、塩村に尋ねた。

「そうなんスよ……ちょっと待ってください」

そう言うと、塩村は『週刊Gallop』のページをペラペラとめくり始めた。

「あ、これです。このレース」

私の弁当を押しのけるように、彼はGallopをテーブルに広げた。
そこには、昨日のレース結果の一覧が記載されていた。

「コレ、獲ったんですよ」

彼はその中のひとつを指差して言った。
私は、その指先が何レースを指しているのかも確認せずに訊き返した。

「いくら獲ったの?」

「30万ッス」

冷めた白米が喉の奥で破裂するような感覚を覚え、私は慌ててお茶を手に取った。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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