六本木ヒルズからの七転八倒

【落札編32】それは2万獲ったと言うのでは

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静岡で採れた茶葉で淹れたと仰々しく書かれている緑茶によって、喉につかえそうになった白米が全て胃の奥底まで流し込まれた。

私は平静を装いつつ、広げられたページを覗き込んだ。そこには、昨日の東京8レースの結果が掲載されていた。

「何、獲ったの?」

私は割り箸を口に咥えたまま尋ねた。

「単勝です」

塩村は低いトーンで言った。

「へー、単勝……」

私は目を凝らして単勝の配当を確認した。
そこには『単勝 7番 1500円』の記載があった。単勝の配当としては十分なオッズだ。

「これを……30万獲ったの?」

「そうです」

塩村はまるで『どうだ!スゴイだろ!?スゴイって言えよ!!』と言外に迫っているような口ぶりだ。

「ってことは……」

私は脳内で電卓を叩いた。だが、ゼロが多すぎて自分でもこれが正解なのかどうかを判断することができなかった。

「30万獲ったってことは……450万になったってこと?」

私は声を潜めた。それと同時に、部屋の真反対に座っていた男がチラリとこちらに視線を投げた。どうやら450万という金額が耳に届いてしまったのかもしれない。

私が塩村の顔を覗きこむと、彼は顔の前で手刀を振った。

「いや、違いますよ。賭けてたのは2万です。だから払い戻しが30万ですよ」

そう言って、塩村は財布の中から一枚の紙切れを取り出した。それは馬券のコピーだった。確かに東京8レースの単勝7番に2万円賭けられている。

「そんなに獲ってるわけないじゃないですか。450万もあったら、今日、ここの仕事もバックレてますよ」

塩村は口にこぶしを当てて笑った。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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