六本木ヒルズからの七転八倒

【落札編33】夢の帯封

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「そうだ……コレです」

塩村はズボンのケツポケットから財布を取り出し、その中を漁り始めた。下品な行いだとは思いつつも、チラリと横目で札入れを覗いてみると、十数人の福沢諭吉が狭いスペースで肩を寄せあっていた。

「コレが昨日のヤツで、こっちも全部当たりです」

彼は二十枚ほどの紙切れをテーブルの上に広げた。それは、的中馬券をコピーしたものだった。競馬場や場外馬券売り場には、馬券をコピーしてくれるサービスがあるらしかったが、本当にコピーしている人は初めて出会った。私自身は一度も馬券をコピーしてまで保管しておきたいと思ったことはなかったが、これくらいの高額払い戻しならばその気持も分からないではない。

「コレなんか、帯ですよ帯」

そう言って塩村は一枚のコピー馬券をつまみ上げた。それは一年ほど前の日付で、東京第3レースに馬連4頭ボックスを各一万円ずつ購入している馬券だった。

「この5-8が入って、125倍ッスよ」

「……ってことは、125万か」

「です!」

塩村は短く答えると、ニヤリと口の端を上げた。

百万円以上の払い戻しの時は、JRAの名が印刷されている『帯』で巻かれた札束を窓口のおばちゃんから受け取ることになる。テレビ番組で芸能人が受け取っているところは見たことがあったが、本当に受け取ったことがある人には初めて出会った。『帯』は競馬好きの夢でもある。

「今週末も行きますけど、一緒に行きましょうよ」

塩村がコーラを開けながら誘ってきた。密封された炭酸が放出される音が室内に響いた。

「そうだねぇ……行きたいけど、昨日も行ったしなぁ」

私がどっちつかずの回答をすると、彼はグイッと顔を寄せてきた。

「良い情報が入るんですよ。マジで勝てますよ」

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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