六本木ヒルズからの七転八倒

【落札編35】カドのサラリーマン金太郎

←BACKパソコン版【落札編34】現在、投資15000円
←BACKスマホ版【落札編34】現在、投資15000円

午後七時を十分ほど過ぎた頃、私は池袋駅のホームへと降り立った。私と同じように仕事帰りのサラリーマンやOL、家路を急ぐ人々とこれから街へ繰り出す人々とがごった返し、さながら大鍋の中のきんぴらごぼうのようだ。

そんなきんぴらごぼうをかき分け、いけふくろう像を通り過ぎて地上へと出ると、池袋の街はすっかり夜の闇に包まれていた。

ビックカメラを左手に見ながら、明治通りを進む。半世紀以上はそこにあるのではないかと思われる古めかしい喫茶店の角を左に折れ、細い路地へと入る。そのまま十数メートル歩くと、『スロットトヨタ』が見えてくる。

『トヨタ』のすぐ目の前にある風俗案内所から出てきたサラリーマンをひらりと避け、『トヨタ』へと足を踏み入れる。

自動ドアが開くと、あの聞き慣れた騒音と独特のタバコの香りが耳と鼻を刺激する。本来ならば忌み嫌う対象であるかもしれないが、スロッターにとってはこれがたまらないのだ。

私はその音と香りに懐かしさと安堵感を覚えつつ、ホール内の真ん中の通路を進んだ。

ホール中央の大きな通路を越え、さらに進むと『サラリーマン金太郎』のシマが見えてきた。私は一旦足を止め、遊戯している客を眺めた。

すると、一番奥のカド台に、見慣れた頭を発見した。コインを投入する仕草、レバーを叩く様。間違いなく、裕子のそれだった。

私は裕子の元へと歩み寄り、耳元で話しかけた。

「結構出たじゃん。やるねぇ」

不意に話しかけられて驚いたのか、裕子は両肩を大きくビクつかせた。

profile

長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
  • 性別:
  • 誕生日:
  • 血液型:
  • 出身地:
  • 好きなもの:
  • 嫌いなもの:
  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

calender

7月≫
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

戻る