六本木ヒルズからの七転八倒

【落札編4】相手が、いない。

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「10番は二着になったのかな?」

裕子は息も絶え絶えに言った。

「アレは差してるよ。測ったようにね」

「ホント!?」

長年、競馬を見ていると、ハナ差のきわどい勝負であったとしても、ほとんどの場合は正確にその着順を見分けることができるようになるものだ。このレースの二着争いも、おそらく10番が先着しているだろう。

「ほら、リプレイやってるよ」

私は、テーブルに備え付けられた小さなテレビモニタを指差した。

S指定席は二人一組の椅子とテーブルがあり、そのテーブルの中央には10センチ四方程度のテレビが埋め込まれているのだ。裕子と競馬に来た時はいつもこのS指定席に入ることにしている。一人3500円とけっこう値は張るが、この快適さに慣れてしまったらもう他の選択肢はなくなってしまった。

テレビモニタには、一着でゴール板を駆け抜ける1番の馬と、その後に続いて雪崩れ込む10番のサクセスハイ号の姿があった。

「ほら、ハナ差で二着に来てるよ。よかったね」

祝福の言葉を裕子に送ったつもりだったのだが、彼女の眉間には深いシワが刻まれている。

「一着って……何?」

裕子は口元に手をあててつぶやいた。

「ん?1番でしょ。白の帽子だったよね、確か」

私はそう言って競馬新聞を見直した。1番の馬柱には白三角が並んでいた。

裕子は胸ポケットにしまい込んでいた馬券を取り出した。
三枚ある馬券を全て見直し、ガックリと首を折った。

「1番……買ってない。10番が軸なのに……」

あれだけ絶叫しておいて、この結果である。実に裕子らしい。

落胆する彼女を尻目に、私は競馬新聞に視線を落とした。
次のレースが障害競走だということを確認してから、私は新聞を畳んだ。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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