六本木ヒルズからの七転八倒

【落札編6】ボッタクリの極み

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「何度来ても目を疑うような高さだね」

店の入口に広げられているメニュー表を凝視しながら、裕子は呆れたように言った。
すぐ傍に店員さんがいるというのに、声のボリュームがかなり大きかった。

裕子は基本、おおらかな性格なので、こういったことをすぐ口に出す。普段ならば彼女の脇腹でもつついて「オイッ」とでも言って止めるところだ。だが、今日はそれをしなかった。なぜなら、私もまったくもって同じ感情を抱いていたからだ。むしろ心の中で「よく言ってくれた」と拍手を送っているくらいだ。

私も、もう一度メニュー表に目を通す。

・麻婆丼セット――1400円
・ラーメンセット――1220円
・ビーフカレー――1350円
・ミックスサンドウィッチ――1020円

一瞬、めまいを覚えた。今から食べようとしているのは、あくまでも『昼食』なのだ。しかも、すでに結構な金額が馬券という名の紙くずとなって日本中央競馬会という名の『引き出せない銀行』に貯金されているのだ。そこにきてコレだ。

百歩、いや百五十歩譲ってナントカセットは許そう。もしかしたら、想像をはるかに超えた豪華なセットなのかもしれないのだから。だが、サンドウィッチが1020円なんてことがあってもいいのだろうか。

「なんでこんなに高いの!?」

裕子は口に手をあてながら言った。

「某有名ホテルのレストランだから……ってことだろうけど。まぁ場所が場所だけに、客全員の金銭感覚が狂ってるからじゃない?」

「ほかのお店って無いの?」

「一階まで降りれば牛丼屋があるけど……そっちにする?」

一応、疑問形にしたが、この答えも予想は簡単だ。
裕子は露骨に嫌そうな表情をした。

「うーん……、いいや、入っちゃお」

結局、ギャンブルをする人間は得てしてこんなものなのだ。私を含めて。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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