六本木ヒルズからの七転八倒

【落札編8】意味不明な数字の羅列

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そちらを向かずとも、その声の主は先ほどまでこの席に座っていた男だということは予想できた。だが、私は好奇心を抑えることができず、その声が聞こえないフリをして椅子の上にあった紙をひらりと裏返した。

紙の裏側には、たくさんの数字とハイフンが羅列されていた。
もしここがお洒落なオープンカフェや湘南のビーチであれば、それが何を意味するのかを特定することは困難だっただろう。だがここは天下の東京競馬場だ。その数字とハイフンの羅列は、間違いなく『買い目』であろう。

「あ……それ」

私の肩越しに手が伸びてきた。その手をたどって視線を上げると、ひとりの男が立っていた。

グリーンのネルシャツにキャップを被りリュックを左肩に下げたその男は、どこか顔つきが幼く、秋葉原あたりを歩いていそうな印象だった。

「あぁ、これ。落ちてましたよ。どうぞ」

「どうも」

買い目が書いてある方をわざと上に向けて紙を差し出すと、男は受け取るやいなやすぐに紙を折りたたんだ。たかが買い目と書いた紙を、そこまで見られたくないのだろうか。

男はキャップのつばに手をあてて僅かに会釈をした。
私も無言で首を曲げてそれに応えた。椅子に座り直し、正面に座る裕子と顔を合わせて笑顔を送った瞬間、視界の端に何かがこちらに向かってくるような気配を感じた。

咄嗟に肩をすくめると、私の顔の数センチ横を、何かがかすめていった。

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長崎 正吾

  • 名前:長崎 正吾
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  • 1978年生まれ。34歳の夏、職を失う。20代の頃にスロットで生活していたことを思い出し、フラリとホールへ舞い戻る。そのままスロット生活者へ。基本的にはジャグラーシリーズのみを打つスタイル。スロットで糊口を凌ぐ傍ら、iPhone/Android向けアプリ「ジャグラーで喰う技術1&2」をリリース。

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